距離を置こうと言って家を出た夫に、新しい相手がいるらしい。別居中だから浮気じゃない、と言われたら、そうなのか——なりません。ただし、単純に請求できるとも言い切れないのがこの論点で、分かれ目は一つの問いに集約されます。
「別居した時点で、婚姻関係はすでに破綻していたか。」
仕組み: なぜ「破綻」が争点になるのか
不貞への慰謝料は、不貞行為が婚姻の平和を壊したことへの賠償です。だから、壊れるべき婚姻の実体が別居時点ですでに無かった——と認められると、賠償の対象が無いことになり、請求は認められにくくなります。
請求された側はこの理屈で「もう破綻していたのだから不貞ではない」と反論してきます。これが実務でいう破綻の抗弁です。別居中の浮気の争いは、ほぼこの抗弁を巡る攻防になります。
分かれ目の判断材料
別居=破綻、ではありません。裁判所は別居の実体を見ます。
| 破綻と認められにくい事情(=請求側に有利) | 破綻と評価されやすい事情 |
|---|---|
| 別居期間が短い(数か月程度) | 数年単位の長期別居で交流がない |
| 生活費の送金が続いている | 経済的にも完全に独立している |
| 連絡・行き来・家族行事への参加がある | 連絡がほぼ途絶している |
| 修復のための話し合い・冷却期間としての合意があった | 離婚協議・調停がすでに進んでいた |
冷却期間のつもりの別居、単身赴任、子どもの学校の事情での別居——こうした婚姻の実体が続いている別居なら、その間の浮気は同居中と同じく慰謝料の対象になりえます。
請求する側の準備: 証拠は「二階建て」になる
別居中のケースで請求する場合、集めるものが通常より一段増えます。
- 不貞の証拠(通常と同じ) — ホテルの出入り・宿泊など。証拠の集め方参照
- 婚姻の実体の証拠(別居ケース特有) — 生活費の振込記録、修復の話し合いのLINE、帰宅や家族行事の記録。「別居はしていたが、婚姻は続いていた」ことを示す材料
2つ目は、時間が経つと「そういえば残していなかった」となりやすい記録です。請求を少しでも視野に入れているなら、今の時点から意識的に残し始めてください。
なお、別居中の相手の行動調査は、同居中より生活パターンが読みにくく、調査設計の巧拙が費用に直結します。手持ちの情報でどんな調査になりそうかは、無料相談で先に見積もるのが現実的です。
まとめ
- 別居中でも請求は可能。分かれ目は「別居時点で破綻していたか」
- 冷却期間・生活費の継続・連絡の維持があれば、破綻の抗弁は通りにくい
- 証拠は「不貞+婚姻の実体」の二階建て。後者は今日から残し始める
金額の目安と増減要因は不倫の慰謝料の相場、時効の数え方は時効の記事へ。
よくある質問
冷却期間のつもりの別居中に、夫に相手ができました。
修復を前提にした別居(冷却期間・単身赴任的な事情)は、破綻とは評価されにくい典型です。別居の経緯を示すもの——「距離を置いて考えよう」というLINE、その後の連絡や帰宅の記録——を残しておくと、破綻の抗弁への反論材料になります。
何年別居していたら「破綻」と判断されますか?
一律の年数基準はありません。数年単位の長期別居で交流もない場合は破綻と評価されやすくなりますが、期間だけでなく、連絡・生活費・修復の意思など実体の総合判断です。期間が長くても関係の実体が残っていれば破綻とは限りません。
別居中の浮気でも、証拠は同居中と同じように必要ですか?
必要です。むしろ別居中は「破綻していたか」という争点が加わるため、不貞の証拠に加えて婚姻の実体を示す材料も要る、という意味で準備項目は増えます。どちらも時間が経つほど集めにくくなるので、請求を検討するなら早めに動いてください。
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